シグマコンサルティングでは何でも作ってみるのマインドの元、色々な物づくりを行っています。今回は、自分で音楽を作ってみようという事で、この音楽作品が出来るまでを紹介したいと思います。
聴いてください、この素晴らしい歌声。
1996年位に谷池さん(ビジュアル系なのにイタリア風)が作曲した曲で、ループする毎日をテーマにした名盤。確かにお金がなくて当時は毎日抜け出せないループでしたね。喫茶店に行くお金もなく、公園で菓子パン食べながらバンドの打ち合わせしてました。歌詞はなかなか良い。といっても当時の音源も下手さゆえ惨憺たるもので。
片山さんはまずアレンジに取りかかってくれます。音源を耳コピーからすぐDTMで編集するように各トラック作ってくれて本当に凄い。
片山さんのおっしゃることを総括すると
という事で、何度も同じ展開があり、ボールを自陣で回し続けるような僕らのサッカーは方針転換を余儀なくされるのでした。
アレンジの検討をお願いして、2か月。これが第3回目くらいのアレンジ版。
Bメロに入ってるキーボードはこの頃から健在、とても素敵。 歌も雰囲気を出すために片山さんが歌ってくれている。
片山さんの素晴らしいところは、まずやってみようという、システムやサービス業界に必要なフットワークの軽さを音楽作りの中でもみせてくれるだけではなく、編集のお願いをすると早めに極振りをしてくれるので、そっちの方向はあるなし、というのを判断しやすくしてくれることにあります。和食か洋食か、テイラースイフトか和田アキ子みたいな。
何回かやり取りをして編曲を詰めていると、片山さんが提案してくれるものが60年代寄りなのと、僕らが目指す方向=言語化出来てないせいで「なんか違う?」でにっちもさっちも行かなくなります。迷宮組曲的になかなかアレンジが決まらず気がつけば冬が近づいてきます。
これは僕らがどんな音楽をしたいのか言語化出来ていないのが悪いのです。要求定義できてない。
こんな時どうすれば良いか?IT業界の発注者責任という言葉をご存知だろうか。発注者はいったいどんなシステムを作りたいのか、システムを使ってどんなビジネスにしたいのか、それをちゃんと言語化したり、システム会社と作業分担をしてきちんとプロジェクトを進めていく義務があるのだ。
この辺から発注者責任ということで自分でも作業を始めるのでした。 指示してるだけではなくて、自分から沼に入らねば。
曲を編曲するにはDTM環境が必要で無償のStudioOneでやりたかったけど、片山さんと環境を同じにすることに意味があり、データのやり取りが容易になるので五万円位で購入。曲を作り終えた今では生涯の相棒と呼べるCubaseとの出会い。Cubaseオマエは本当に凄いツール。
初めてVisual Studioに触った時のような、何もわからない感。結局触って試して、つまづいてYouTube見て克服してを繰り返すしかない。 Azureのポータルにプログラムをデプロイしてもずっとクルクル回ってて一向に進まない、そんな時代を思い出す。
本当はアレンジが決まってから録音に着手すべきなのですが、アレンジが、なかなか確定せず直しながら録音していくことになります。システムも当然ながら戻りのあるプロジェクトって大体辛くなりますよね…。
まずは自分のギターを録音してみようということで、始めたものの、アンプとエフェクターどうしよう問題。家にアンプは本当小さいおもちゃみたいなのがひとつだけ。スタジオに行って録音するしかない?
これはもう心に決めていた解決策があって、今回一番楽しみにしていたソフトウェアがある。Amplitube4だ。パソコン上でかなり詳細に音がエミュレートできる、ぶっちゃけスタジオで録音したのか、パソコン上なのかわからない。このUI凄くないですか?超直感的。
音の再現性も高い。アンプにマイクをどう設置するかまでコントロールできる。実アンプ買うより満足してしまう。無限にプラグインを買い続けたくなる。エフェクターや、アンプやラック五万円位買いました、課金厨。
今回は明るい、カラっと晴れたような使いやすい歪みが欲しかったのでOrangeというメーカーのアンプを使います。Orangeはクセが少なく、2時間くらいで音作りが出来ました。音作りってドツボにはまるので(若い頃は一か月位沼に落ちてた)、なるべく悩まないやつを。
お盆に始まったプロジェクトもクリスマスに近づき、一つ気付いたことがある。今うちのバンドそういえば三人しかいなかった。
ボーカルは数年前に一人凄いお方がいたけど今は有名なダンサーになってしまい業界人ゆえ頼みにくい。
歌を歌ってくれそうな方も思いつかず、途方に暮れます。どこか中野や高円寺あたりの盛り場にスカウトに出かけようか、新宿あたりのスタジオにメンバー募集を貼るべきか。
でも今貼り紙するって、とっても牧歌的。やっぱり今回はテクノロジーで解決していきたい。
検索すれば何か見つかるのではないか、で色々なワードで検索するのですがなかなか見つからない。ボーカル募集とかじゃないし。ニコニコ動画とかみて、歌ってみた、から探すか?
うたいれ!というサービスがあることを知るのでした。確かにボーカル募集ではなくて、歌を入れて欲しい、確かにそうだ。
このサービスはすごくて、凄腕のシンガーたちに楽曲の歌入れをお願いする事が可能。 サービス的にはプロの作曲家が曲のコンペとかに出す際に仮歌として入れてもらう事が多いらしい。 一度調べ物をすると病的に調べ続ける僕は2日間まるまるすべてのシンガーのサンプルを聞き、Orcaさんの声にベタ惚れし、お仕事を依頼するのでした。
Orcaさんのページはこちら。
https://oooorcaaaa.jimdofree.com/
多忙な中、一ヶ月強を目処にOrcaさんは歌声を作ってくれたのでした。wavの形式で歌だけ録音してくれれば、DTM上で読み込みも可能なので、一回も会わずに音源って作れるんだというのも、今回の気付き、かつテクノロジー的な勝利。連勝。
ギターを録った後に新たなる問題が。Cubaseのドラム音源がなんとも偽物っぽい。本物のドラムとはやはり全然違う。
ドラムのレコーディングはセッティングやマイクの環境構築が最難関であることから、高校生の時から友人であり、マザーズ上場を成し遂げた、ちょっとだけキレやすい根本さんに辛い思いはさせられず、今回はソフトウェアでレコーディングすることを決意。
色々調べて比較サイトや比較動画をみて、AddictiveDrum2を購入。ガチで一音一音、音をデータとして持っているわけではなくソフトウェアでエミュレートする逸材。かつドラムセット自体のそれぞれのパーツを自分の好みに調整できる。
これぞテクノロジー。
これもかなり注意して聴かないと打ち込みかどうかなんてわからん。
AddictiveDrumsは、アニメ主題歌界隈だと2015年に流行ったらしく、かなりの曲がこのツールで出来てる上に独特な立体感残響感があるらしく、わかる人には、ちょっと聴けばこれはAddictiveDrumsだとわかるらしい。が、個人的はとても気に入ったのでこれでいく。
ペタペタとドラムを打ち込み、完了。三連勝。
この譜面なんか80年代っぽくてダサいから直そう、PassCodeやBishみたいにしよう。と根本氏。彼は無類のPassCodeやBish好きでライブにもよく行っている。
確かにプロデューサーやギタリストがやっつけで作ったドラム譜面なので、やはり実際に叩けない譜面になっていたり、カッコ悪い部分があるようで、協力して修正することにした。 数時間の打ち合わせを何回かやりながら、修正完遂してくれたのでした。さすがうちのドラム、マザーズ上場。ちょっとキレやすいけど、ドラムが考える譜面は本当にカッコいい、最後のサビのドラムロールとか。オカズの諸々。
彼が望むPassCodeっぽくしたいには叶わなかったけど(あっち半分打ち込みだし)それは次回で。飽きやすくてキレやすい所を除けば、最高のメンバーである。
これもCubaseの音源だと偽物っぽい。ドラムを本物っぽくした結果、ベースのピアノ鍵盤でMIDI MIDIしてる打刻音が気になる。ピアノの鍵盤を無理に低音にしてベースにした感じ。
生音をお願いしたいので、スーパーエンジニア兼ミュージシャンの桜井さんに再度相談。一度レコーディングに付き合ってくれることになった。一発録音してもらったのだが、一発録音なので多少ズレており、かつ曲に編集が入ったりするので、一発録音を編集しまくって対応では解決しなくなってしまった。自分でも2日くらいベースを弾いてみたけど満足いくレベルにはならず生音を断念。
桜井さんありがとう、そしてごめんなさい。 開発工程がめちゃくちゃなので、音はボツになったけど、フレーズはコピーさせてもらいました、特にBメロのフレーズは一回目も二回目も素晴らしいです。
この変更が激しい中、テクノロジーでの解決を探す。今一番流行っているのは音源を一音一音サンプリングしてそれを組み合わせはれるツールトリリアン?らしい。
が、トリリアンは音源容量が20GBするだけではなく、お値段も高め。そこでソフトウェアがベース環境全てをエミュレートするというMODOBassを購入。200MBという軽量ソフトながら、多様な表現が可能。これもテクノロジーの勝利だと思う。
こっちの画面も直感的で素晴らしい。ベースの種類だけでなく、指かピックで弾くか、弦は新しいのか、アンプのセッティングなどもエミュレート可能となっている。
同じMIDIなので、プラグインを差し替えるだけで動いた。 このプラグイン購入が止まらない感じ、本当に沼だ。この数週間であっという間に15万円くらい投資。
そんなこんなで、ギター、ボーカル、ドラム、ベース、と録音を仕上げた僕ら。 こんな段階でも、迷宮組曲的に編曲は発生。
特にサビに入る前のキメと、大サビのリズム、イントロの構成などは、この後に及んでも何度もやり直していたのでした…。結局最終日まで直していた。
編曲が入るとどうなるか?音の録り直しとなる。(まるでSHIROBAKOの絵コンテ、原画からやり直しという地獄のドミノ) システムでいうと設計からやり直し、場合によっては要件定義からやり直し。
ただ、今回テクノロジーの勝利だったのは、ドラムとベースはソフトウェアなのですぐ直せるし、ギター録音もやり直し部分だけネットで送りあえば、数時間で修正できてしまう。まさにテクノロジーの勝利。3勝一分け。
でも、今度は出戻りしない開発工程を目指したい…。どんな曲にしたいか、どんなバンドサウンドにしたいか、要件定義をちゃんとせねばならなかった、反省。どんな業界であれ失敗するプロジェクトというのは、要求や要件がきちんと定義されていないことが大きい。当たり前なんだけど。
SHIROBAKOで原作者とちゃんと話し合いたいって製作陣が願ってたのは、要件定義の根幹な部分なのです。
録り終わると、ミックスという工程に入ります。音が微妙に音階やタイミングズレていたりするのですが、それはなんと昨今波形をいじって修正できちゃいます。
発音するタイミングや少し音がズレている場合、こんな波形をいじって解消できてしまいます。昨今ほとんどの楽曲で行われているそうで、歌の下手なアイドルでもこの手法で音痴を直して、音源をリリースできるとか。
ギターの演奏にも多分に波形メンテナンスが入るのでした、結果タイミングや音程のズレが目立たなくなり、とても聴きやすくなります。片山さんありがとう。
波形の調整が終わると、次のミックス作業は各トラックにコンプレッサーやイコライザーをかけていきます。そして、片山さんから記念すべき、第一回目のミックスが帰ってくる。都会に修行に出したうちの娘は綺麗になって帰ってきただろうか?
第一回目は聴いてびっくりで、純朴な田舎娘は厚化粧な感じになって帰ってきたのでした。 音源はこちら。
千葉茨城ならではの純朴さが良かったのに、これはプロデューサーと方向性を話し合わねば。(繰り返しになりますが、最初の要件定義が足りていなくて本当にすみません。)
どんな形にしたいか早めにこんな感じを提示すべきだったのですが、よく見る失敗プロジェクトみたいなやり取りが発生してしまいます。
5点直してもらえれば、7点依頼をかけてしまう。まるで、*西武ライオンズの山賊打線対西武投手陣(防御率5点台)。*試合は泥試合の様相をていしていきます。
5,6回くらいやりとりをしても、落としどころがない改善フェーズが責任を取り、ミキシングを覚えてある程度自分で直すことにします。これは片山さんからの提案で相手の作業の大変さを知るためにもとても良かった。 指示だけするって、どの業界でも本当に良くないと思う。 方法を片山さんに教えてもらいながらSKYPEで教えてもらいながら修正していきます。
一部過剰に感じるエフェクトを切る
コンプレッサーは圧縮して音を均一化するエフェクターなのですが、ちゃんとかけると特定の部分だけトゲがあるとかいった事がなくなります。かけすぎると、ハリがなくなるので注意。
最初は娘にそんなケミカル厚化粧させられんと僕も考えていたのですが、適量をかけると最高に映えます。確かにカラオケでエコーかけるととてもうまく聴こえるし、必須のアイテム。
今回はボーカルとギターのパワーコードの部分に使いました。そして、ボーカルには片山さんの教えで、ディレイも少々かけ、少しだけ輪唱ぽくし、厚みをこさえます。
結局全トラック再チェックをかけます。タイミングも直したり、演奏も直したり。 あるトラックを直すと他の部分が気になる、気づいたら全ての音量が上がりすぎている、という一体もう何度目かの沼にやってきます。
このミックス作業に関わった数日間はろくに睡眠時間を確保できず、頭も正常じゃなくなり病んでいきます。気になると永遠に気になるタイプなので、変数や正解が無限に存在する音楽を仕事にしてなくて良かった…。
本当はバスドラとかスネアとかドラムから基準を調整していくらしいので、ちゃんと順序立ててやれば良かった。
iPhoneだけではなくて、色々なイヤホン、ヘッドフォン、スピーカーで音量バランスを確認します、これもなかなかメンタルの病む作業でした…。
病みながらミックスダウンも終了します。 マスタリングはミックスダウンの後に、コンプレッサーやイコライザーをかけて最終調整する作業です。ミックスダウンとマスタリングは、従来担当も違うのが業界通例だそうです。 フロントとバックエンドのエンジニアが分かれて作業分担する事があるように。 そんな事も知らなかった。
ミックスダウンは完全に片山さんに任せます。 バランスを突き詰めて、ツーミックス(一度wavに落とすのがミックスダウン。ここまでで一仕事。マスタリングはそのツーミックスを加工したり、最終的な音量を決めて音圧を設定したりします。
ついに最初のマスターが完成します。 ここまで長かった。
音圧戦争。人類の負の歴史。
人間は音が大きいものを良いと感じてしまう傾向があるらしく、昨今大半の曲は音量音圧バリバリになっています。波形が区別つかなくなるくらい音量を上げるそうです。
音圧を上げるメリットはリスナーの気を引きやすい、一方デメリットとしては強弱のダイナミクスがなくなってしまい、ずっと全力の棍棒で殴られてるような感じになります。
蔑称として、この音量音圧バリバリになった波形は海苔とも呼ばれます。 実は皆さんが聞いている曲もこのようなケースが多いのです。
海苔が絶対かというとそうでもなくて、YouTubeやサブスクリプション型の音楽が流行るようになると、 音楽を流すサービス側で音量がコントロールされるようになり、勝手に音量や音圧が削られます。 どのくらい削られるかはYouTubeで動画を右クリックし、詳細情報から確認できるので、 自分の好きなアーティストでぜひやってみてください。 このサービス側での音の削減をラウドネスノーマライゼーションと呼びます。 ↓の画像何か凄くて、音圧ゴリゴリの人たちなのですが、61%削られています。
我々はどうするか、悩みました。大好きなアーティストみたいに音量音圧を50パーセントくらいYouTubeに削られるか、それとも削られなけど少し薄くて音量が低く感じるものを出すか?
結論としては、さすが曖昧日本人15パーセント削られて85パーセントくらいでどうだろうになりました。音量音圧バリでは無いけど、多少大きくしたって感じです。
マスターができたのでついに最終段階。iTunesやGooglePlayに我らが錦を立てるのです。
いろいろな音楽サービスで配信するには一個ずつ契約するのではなく、まとめて配信してくれるようなサービスが重要になります。TuneCore、Frekul、BIG UP!といったサービスがあって今回はTuneCoreを選択しました。
本来技術選定とかだとやんないんだけど、管理する項目が多く大御所そう、というので決めてしまった。
ここでも誤ちを犯し、配信可能日カレンダーのUIが4/18から青になっていたので、そこを選んでしまった…。本当はグレーになってる翌日から選べたらしい…。このクソUIお願いだから直してください、TuneCoreさん。
という訳で世に放たれるのは4/18位なのです。それまではYouTubeかこちらのSound Cloudで聴いてもらえると🙇♂️
長くなりましたが、「Days」が世に生まれるまででした。また次の曲で会いましょう。
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